2012年4月13日金曜日

日本症候群研究(上)

私たちはここ数年、日本症候群の多種多様な形態や症状について、その誘因を探求してきた。ここに報告するのは、その研究の一部である。この報告についても、医師の守秘義務による制限は受けており、ゆえに報告できるのは一部の症例のある部分のみである。それでも、私たちはこの報告が将来の研究の進展に寄与する関心を呼び起こすことを願って、この貧しい成果を公に問うものである。

症例1.ドーロ


ドーロは発症時六歳。私がこの患者を看たのは彼女が19歳の時である。彼女が育った家族には幾人か精神病者がおり、彼女もその遺伝的負荷を受け継いでいるようだ。彼女自身は以前より健康で、よい家庭に育ち、飲酒も薬物摂取の経験もほとんどない。

社交的な生活としては、友人と週末にダンスをしに出かける、というくらいで、恋人はいなかった。最近モルモン教に改宗したという彼女は、フランス人の男たちは結婚前に性交渉を望む変態だ、と声をわななかせたあと、罵り散らし、人々に枕を投げつけ、掛け布団や下着のボタンを引きちぎるなどした。

催眠療法によって落ち着かせた後、じゃあどういう相手となら結婚できるのか、と問うと、彼女は白い袴を着た日本人と結婚するという。日本にはモルモン教徒が多いので、婚前交渉に関しては心配していないらしい。


症例2 ミス・パーシー

ミス・パーシーの発症時は不明。彼女が20歳のときに彼女は私のクリニックを訪れた。話を聞くと、社会的な面での人生は順調であり、とくに日本人に対する極端な興味も見せなかった。ところが動物園の話になると、

「身動きなさらないで、どうすればいいのでしょう! 私にお触れにならないで! もしネズミや蛇がそのへんを歩いていたら、どうすればいいのでしょう!」と恐慌状態に陥った。

私が催眠状態において日本の動物園ではそんなことはない、と教えると、涙を一時間ほど長し続けあと、この症状は除去された。


症例3 マリー・フォン・O

マリー・フォン・Oを私が看たときに彼女は16歳だった。日本のあるアニメを見ていた5歳のときに発症したらしい。私の不注意のせいで、このアニメの名前をメモするのを忘れてしまい、それがなんだったのかはわからないままだ。

ある日彼女の腰が痛むというので診察に行くと、

「先生明後日からバカンスなんですが、明日は体育授業があるんです。この寒い中。外で走らないといけないんです。ちょっと熱があって体がだるいので、やりたくないんです。明日、ベッドの中で学校に行く前に、重病じゃないけど学校に行けないくらいの病気を演じてみようかしら。『お母さん、とっても熱があるの。今日は学校を休ませてちょうだい』って。でも私よい女優じゃないから、どうすればいいでしょう。」

というので、

「バスのなかに体操着を忘れてごらんなさい。バスは何時にいつも乗るのだね」

と聞くと上の空で聞いておらず、熱に浮かれた調子で

「でも、もう私あらゆる手段を使い尽くしたんです。『昨日よく眠れなくて朝なんにも食べていないんです』『今日は頭がなんだか痛いんです』『先生お・ね・が・い・・・』」

そこで、フランスでは水泳の授業はあるのか、と訪ねると、とくに季節に関係なく近くの公営の温水プールの一部を借りてやっているようだ。主にそれは水曜日の午前中のようである。

0 件のコメント:

コメントを投稿