2012年5月2日水曜日

放射線被害を理解するための5つの区別

放射線による被害、被曝については、最低でも次に挙げる5つの区別をする必要がある。ぼくがネットで見る限り、この区別が全部きちんとできている人は何らかの専門家、アマチュアを問わず、ごく少ない。基本的なことは下で読めるのだが・・・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E6%9B%9D#.E3.83.9A.E3.83.88.E3.82.AB.E3.82.A6.E5.8A.B9.E6.9E.9C

1.内部被曝と外部被曝

よく、多少の放射線は体にいい、みたいな意見を目にする。これは、ホルミシス効果と呼ばれるもののことだ。参考文献はこれ
ほんとか嘘かはおいておいて、これは外部被曝の場合のお話。プルトニウムが崩壊するときに出すα線は紙一枚で遮断できる、というのもやはり外部被曝の場合。

放射性物質が体内に取り込まれた場合、それを内部被曝と言う。取り込まれた放射性物質はそれが体外に出されるまで、放射線を出し続ける。セシウム137が崩壊して半分になるのにかかかるのが30年。

「従来の放射線被曝の分析では、外部被曝と内部被曝の区別よりも、浴びた放射線の強さ(線量)と障害の関係の解明に主眼が置かれていた。だが最近の研究では、体内に入った放射性微粒子による低線量の放射線に長時間さらされると、遺伝子の修復能力が損なわれ、細胞周期の早い生殖細胞や造血機能(骨髄)、胎児などに障害を生じる可能性が指摘されている」
http://serv.peace.hiroshima-cu.ac.jp/fkiroku/article57.htm

1の要点は、体の外と内は違う、ということ。こんなことは学校で習わなかったという人はいますぐ違いを調べること。参考文献はこれ


2.経口摂取と吸入摂取

どうやって体に取り込まれるか。呼吸によって肺に取り込まれる場合と、食物と一緒に胃や腸に入り込む場合がある。後者の場合、体はウランやセシウムを吸収しないので、比較的早期に排出されると言われている。前者の場合、臓器にたまり、すべて崩壊するまで放射線を出し続ける。放射性物質がすべて崩壊するまでには、だいたい半減期の10倍かかる。

2の要点は、呼吸と飲食は違う、ということ。こんなことは学校で習わなかったという人はいますぐ違いを調べること。参考文献はこれ


3.土壌汚染と空気汚染

関東土壌汚染マップというのが策定されている。これによると、福島はかなり汚染されていることがわかる。
http://konstantin.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2011/08/30/110830_nouchi.jpg
もちろん、放射性物質がたまりやすい場所とそうでない場所がある。東京は大丈夫かというと、ガンダーセンが東京で採取した土からはいずれも高濃度の汚染が確認された。


土壌汚染などたいしたことはないと考えるかもしれない。確かに、放射性物質の経口摂取は被害が少ないことをすでに述べた。だが、土壌にあるということは、それ以前には空気中にあった、ということだ。ここに空気汚染のシミュレーション動画がある。事故後、どのようにして放射性物質が空気中に拡散していったかがよくわかる。


福島第一発電所では、1号機の原子炉建屋が3月12日午後に水素爆発を起こしたのに続き、14日午前に3号機が水素爆発した。
http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-841.html

水素爆発だというのは公式な発表だが、バズビー氏は核爆発だと言っている。これが本当ならとんでもないことだ。もちろん、この情報を疑う人もいる。
http://agora-web.jp/archives/1420660.html




とにかく確かなことは、水素爆発にせよ核爆発にせよ、空気中に放射性物質が拡散されたことだ。「プルトニウムは重いので飛ばない」、と言った人も、「水素爆発でガスになって飛んだりしなければ」と言っていた。つまり、この事故によってセシウムやヨウ素だけでなく、各種プルトニウムも空中に散布されたのである。事実、三十キロ地点の土からもさまざまなプルトニウムが検出されていきている
http://goo.gl/ibBtf
ちなみに、空気汚染についてはこちら。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E2E4E2E6918DE2E4E3E2E0E2E3E39180EAE2E2E2

農業用地における汚染というのは、そこで撮れる食物によりこれからも汚染が続く、ということ。空気汚染はただちに危険、ということ。
3の要点は、空気と土は違う、ということ。こんなことは学校で習わなかったという人はいますぐ違いを調べること。参考文献はこれ


1.2.3.と合わせると、空気に漂っている放射性物質を吸引摂取した場合の内部被曝が最も怖い、ということがわかる。

それ以外の場合の例を持ち出して、放射能は安全というのは全部正しくない。

すでに触れたように、微量の放射線なら大丈夫という報告がある。危険な域として認識できるのは年間100ミリシーベルトからだ、というがあるところでは通説になっている

ICPRによれば、年間100ミリシーベルトの被曝で高まる発がん率は0.5パー、200人に一人とされている。しかし、この数字は被曝量と発症者ともに過小評価された上での数値ではないか、という指摘がされている。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/2cee0b9f12a2ea7ca58f4a2bc94df78a

考えてみよう。ここに、少ない量だったら健康になる薬がある。しかしある量を超えると癌になる可能性が高まる。それをあなたは取るか。癌というのは、すごい病気である。100ミリ以下だと、癌だけでなくほかの小さな病気や健康障害なんかもまったくない、というのはありえないし非科学的だ。癌になる可能性が高まる、ということは、それよりもっと高い可能性でほかの病気になる可能性が高まる、ということだ。
http://takedanet.com/2011/04/481_ecc3.html

そのうえ、この100ミリという数値は外部被曝のものであり、内部被曝のものではない。ペドカワ効果により、100ミリよりはるかに少ない量で細胞や遺伝子に害を与える、ということが言われている。生命による自己修復機能を計算に入れても、これは無視できない要因だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A6%E5%8A%B9%E6%9E%9C
そこで、内部被曝の危険性は外部被曝の600倍と言われている。これが本当なら、内部被曝であれば0.16ミリシーベルトでも有意な形で癌になる危険性が高まるということになる。

たとえば次のような個人による報告がある。

東京都民「検査したら6000ベクレル内部被曝してた」
***************
北海道がんセンターで、ホールボディカウンターを受けてきました。
測定結果、内部被曝していました。セシウム137が、868bq セシウム134が、6373bq
http://alfalfalfa.com/archives/4129002.html
**************

ベクレルは物質における放射能の強さ。1秒間に1つの原子核が崩壊する放射能の量が1 ベクレル。

これを生体の被曝による生物学的影響の大きさの単位であるシーベルトに変換すると、体にどれだけ危険かってのがわかる。詳しくは下のリンク先を参照。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314239.htm
次のページでセシウム134の6373ベクレルをシーベルトに換算する
http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/~kyo/dose/

ICPRの基準をもとに計算すると、経口摂取で取り込んでいた場合は0.08ミリ、緩慢な吸入摂取の場合は0.25ミリシーベルトとなった。

まあ経口摂取だったなら健康になっちゃうレベルだ、という人もいるかもしれない。
だが、これは大人の場合だ。子供の場合は摂取シーベルトの値が変わってくる。

4.大人と子供

同じベクレル数を3ヶ月の幼児が緩慢に吸入摂取した場合、0.7ミリシーベルトになる。600倍すると年間で420ミリシーベルト。

子供は大人と同じものを食べ、同じ空気を吸っていたとしても受ける影響が違ってくる。この四つ目の区別が一番大切だ。
子供にとっては、放射性物質の吸引摂取だけでなく、経口摂取も外部被曝も大人よりはるかに大きな影響を与えうる。子供は体が小さく、地面により近くを歩く。とくに免疫系や甲状腺に影響が出やすい。アメリカで新生児が大量に死んでいた、という報告がある。


人工放射線に対して、大人には年間1ミリ、子供には年間0.5ミリでも避けるべきだと言われている。

たとえば、放射線下作業に従事する労働者の労災基準を見てみると、白血病の労災基準の認定が年間5ミリシーベルト。35年間で6人認定。
http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011042801000030.html

多発性骨髄腫を発症した人は四年間で70ミリ、年間17.5ミリシーベルトを浴びていた。「放射線下作業に従事する労働者の被曝限度は、電離放射線障害防止規則で、年間50mSv」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1160650626
もし年間100ミリでもOKだというのなら、なぜ5ミリ程度で労災が下りるのだろうか? 


5.人工放射線と自然放射線

さて、自然界には放射性物質があるし、宇宙からも降り注いでいる。これは多いところでは年間10ミリシーベルトになるそうだ。また、食物からもカリウム40という放射性物質を取り込んでいる。
http://www.fepc.or.jp/learn/houshasen/seikatsu/shizenhoushasen/index.html
これを持ち出して、放射能は安全という論をはる輩もいるが、人工放射線と自然放射線は違う。核種の動きが違うからだ。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/EV_H_S1.html

実際、同じ放射性物質であり、同じようにその影響はシーベルトで計られるとは言え、それぞれ異なる影響を与えると考えた方がいい。たとえば、アルファ派と中性子派ではまったく違う。

だが、理論的なことがらを云々してもあまり意味がない。一つ一つの専門分野の知見は狭い。たとえば物理学の知識では人体への被害については語れない。一人の専門家が、放射線とその被害について、すべてを語ることはできない。これは専門家であれば誰もが理解できることのはずだが、それをわざと知らないふりをしている人間が多い。

さらに言えば、年間100ミリシーベルト以下の被曝では「科学的に健康被害が確認できていない」、ということは、「なら安全」、ということとイコールではない。まだわかっていない、ということだ。この二つは大きく違う。これもまた混同されて使われている言い回しだ

---------------------------

では、何に注目すべきか。事実にである。これには二つある。統計学的な事実と、過去の事例と比較した事実。

たとえば、福島で健康被害が報告されている。これは個々の事例だが、過去の事例と似通っている。





言うまでもないことだが、癌というのはさまざまな症状を伴う。さまざまな体調不良のあと、死ぬのだ。それ以外にも、被曝は多様な症状を生み出す。

なにか症状が出て、国が保障してくれるかというと、それはまずない。

東京の人の体からセシウム134が6373ベクレル出た、というのは、もはや東京は高濃度汚染されている、ということだ。子供にとってはすでに危険なレベルにある。

福島とチェルノブイリは違う、という意見がある。確かにそうだろう。しかし、セシウムやプルトニウムが福島ではチェルノブイリと違う作用を見せるだろうか。子供たちにおきる健康被害はまったく別のものになるとでも言うのだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿